復職準備の進め方
① まずは計画を立てる
復職準備は計画的に進めることが大切です。向こう1、2週間、何時に起き、何時になったら寝る準備をするのか、何時から何時までどのような作業をするかを決めましょう。
注意点は
- あらかじめ1-2週間分の計画を立てて日誌に書き込む
- 計画は今すぐできると思うことの7割くらいにしておく
- 少しずつ、小さなステップを刻んで確実にステップアップする。
うまくいかない時もあるでしょうが、なぜうまくいかなかったか振り返ることができればそれでよいのです。一歩前の段階に戻って、また進みましょう。
復職準備の期間に養いたいのは自信と判断力です。
これからやろうと考えていることが今のご自分にとって
- 無理なくできること
- がんばればできること
- まだできないこと(やると明日に疲れが残ること)
どれに当たるのか、見分ける力をつけることが大切です。職場に戻ったら、あるいはおうちのなかでも、いつもご自身の判断に確信をもって過ごしていけるといいと思います。背伸びしすぎず、自分だけではできないことは、誰かと協力してやればよいのです。
② 記録をつける
1日を記録した表の例です。毎朝1分か2分で書けるような簡単な記録にするのがコツです。
月曜から金曜まで毎日外出30分、月・水・金に作業30分という計画で始めて1週間たったところを示しています。生活リズムは安定した状態であることがわかります。今のところうまくできているようですが、週の後半にいくにつれて朝の体調の点数が低くなり、少し疲れがたまってきた様子がわかります。
7日の土曜日、8日の日曜日で疲れが回復したら予定通りもう1週間続けてよいでしょう。
日曜日の夜は先のことに悩まず過ごせれば越したことはないので、十分回復したかどうかの判断は月曜日の朝にしましょう。月曜日の朝疲れが残っていたら計画を立て直し、たとえば作業時間を短くして、作り直した新しい計画通りやればよいのです。
この例なら、9日月曜日の朝の点数が50以下だったら作業は火・金の週2回だけにする、作業を15分にする、などです。
あせらず、柔軟に。時には一歩下がってやり直す勇気も大切です。この先、慣れてきたら
- 作業を1日ずつ増やす
- 作業時間を15分ずつのばす
- 外出時間をのばす
- 外出先で作業をする
- 作業を午後にもする
- 外出の時間を早めて実際の通勤の一部をやってみる
などをひとつずつ加えてステップアップしていきます。
③ 作業の内容を決めるコツ
- まずは軽い作業から。
仕事にあまり関係がないものや、少し楽しいことを選んで短時間やることから始めましょう。ニュースに目を通す、本を少し読む、英語講座の動画を見る、など、30分または15分程度から始めるとよいでしょう。
- 慣れてきたら少しずつ、しんどいものを入れていきましょう。
パズルを解く、仕事に関連した資格の勉強など、集中力が必要な作業をしましょう。
作業内容に応じて、時間も工夫しましょう。たとえば最初は午前中だけにして、作業が90分を越えたら午前午後2回に分けるなどしてみるとよいでしょう。
④ 通勤訓練の進め方
- まずは、毎朝決まった時間に外出するクセをつけましょう。
外出時間は短くてもよいので、がんばりすぎず、毎朝続くことが大切です。
- ゆとりが出てきたら、外出の距離を伸ばし、通勤経路の一部を歩くのもよいでしょう。
電車に乗っていた人なら、
- まずは駅まで毎日行く。
- 次に、1駅電車に乗ってみる(まずはやりやすい時間帯で)。
- もともと乗っていた時間の電車に1駅乗ってみる。
- 3駅乗ってみる。
初日からふだん乗っていた時間の電車に乗ろうとしなくてもいいでしょう。すいている時間帯で始めるのがおすすめです。少しずつ進めて、やがて元通りの時間に職場の前まで行けるようにやってみましょう。
先ほどから繰り返し書いている<少しずつ進む><小さなステップ(small steps)を刻む>は行動療法カウンセリングでよく使われる言い方です。その効果は数々の研究で実証されています。
⑤ ペースが崩れそうな時どうするか
復職訓練のペースを保つには、今の状態を知ることが必要です。毎朝記録をつけながら、今の自分の体調を確かめる習慣をつけるといいでしょう。
疲れを感じる日が続いたり、体調が乱れている場合はひとつ前の段階に戻り、うまく進んでいる場合はひとつ段階を上げます。これをていねいに繰り返し、常にペースを保つようにしましょう。
予想外のできごとでペースが乱れることもあります。ご親族の冠婚葬祭など、優先度が高い予定が入る例も実際にあります。その時は、復職訓練をいったんお休みして目の前のことをしっかりこなし、体調を崩さないことに全力を注いでください。やることをやり終わったら、1日のリズムを元に戻していきましょう。
そういう時の生活記録は特に価値が高いので、記録は必ずつけましょう。復職訓練再開の時は中断したステップか、そのひとつ前のステップから始めるのがよいでしょう。
実際にやってみないと伝わりにくい面もあると思います。診察などでサポートしますので、ご相談ください。