パニック障害の
診断と治療
Panic Disorder
Panic Disorder
パニック発作では、動悸と息苦しさ、息がつまるような閉塞感、めまいや吐き気が突然起こります。突然のことなので<どうしよう!?>と追い詰められてしまいます。
パニック発作は、実は自然におさまるものです。症状が一気に強くなるのは始まって7、8分くらいまでで、発作全体の時間はだいたい20分です。それまで待てればよいのですが、何の前触れもなく起こる発作なので強い恐怖感があり、「どうにかなってしまいそうな」切迫感は心に残ります。
この<心に残る恐怖感、切迫感>がパニック障害のもとになります。こんなことでは死なないと頭でわかっても救急車を呼んでしまったという方も多いくらい、初めて経験する発作は怖いものだそうです。多くの方は症状がおさまった後もパニック発作のことをずっと気にするようになり、発作がまた起こるのを避けようとすることを最優先するようになります。この状態のことをパニック障害と言います。
アメリカ精神医学会の分類基準DSM-5に沿って、パニック障害と、これに関連が深い広場恐怖症について見ていきましょう。
パニック発作とは、次のような状態を含む激しい恐怖と不快感が数分間のうちに悪化しピークに達する不安発作のことです。
最初のパニック発作が起きた後で、次のような状態が1ヶ月以上慢性的に続いている時、パニック障害と診断します。
<発作を避けようとすることが生活の中心になる>こと、つまり回避がパニック症の本質なのです。
パニック障害は20代から30代前半に多く、女性は男性の2倍です。大多数の人は、パニック発作以前になにか不安の症状をもっています。特に広場恐怖症とは関係が深いとされています。
広場恐怖症というのは<そこから抜け出せない>状況に恐怖感を持ち、避けるようになることです。
そういう状況は日常生活の中でたくさんあります。
などです。これらすべてを避けようとする生活がとても窮屈で不自由なこと、想像がつきますね。
パニック障害の人の多くは広場恐怖の症状があります。電車の中でパニック発作を起こしたのがきっかけでパニック障害と広場恐怖症になったとしたら、どんなことが起こるのかを考えてみましょう。最初に発作を起こした場所には悪い印象がつきます。同じ時間の電車を避けたくなり、時間を変えるとか、電車に乗らず別の方法で通勤通学するようになるかもしれません。ふだんと違うやり方はなにかしら不便や不自由で疲れますし、毎日発作に関することを気にしているので不安はまったく減らず長引きます。
この例では、不安発作を避けるという部分がパニック障害らしいところで、そもそも混んだ電車が苦手という部分が広場恐怖らしいところです。どちらにも共通しているのは回避、<怖いものを避けること>です。ふだんの電車に乗ることを避けても実はメリットはなく、発作も減らないことがわかっているのに避けてしまうのです。
ふだんの電車に乗らないと朝夕の時間がムダになり、疲れは増し、生活リズムが乱れて不自由になります。仕事や学校に行くのがつらくなることもあるでしょう。症状の影響でできなくなっていることを少しずつやり始めていくことが必要です。
毎日乗っていた電車にまた乗るだけなのですから、慣れてしまえばよいのですが、強い恐怖感があって避けていることをもう一度始めるのはなかなか難しく、なにかきっかけが必要です。
薬を飲んで不安が和らぐことはちょうどよいきっかけになるだろうと思います。薬を飲むと不安が全部とれるということではありません。行動を起こせるように支えてもらうのです。
まずはいつもの時間に駅まで行きましょう。できそうならいつもの電車が来るホームまで。慣れてきたら、電車に1駅だけ乗ってみましょう。そんな風にゆっくり、苦手を乗り越えるように進めていきます。
パニック障害の症状は恐怖と不安の2つに分けて考えることができます。
この両方に効く薬を選んで使う必要があります。
よく使われるのは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)です。
SSRIの主な副作用は吐き気です。吐き気が問題になる時は使えません。
そのような場合はベンゾジアゼピン系の抗不安薬を処方します。